


今のマンションは2軒目で、前の住まいも同じ麻布近辺だったというMさん。「共働き夫婦なので、妻の勤務先に近い都心暮らしにせざるを得なかったんです」。長男誕生後移り住んだ街は、六本木ヒルズや東京ミッドタウンへも行きやすい超都心立地ながら、商店街も近く下町のような雰囲気。
「すっかり気に入ってしまって……。でも、次男が誕生し、将来の子ども部屋を考えると、さすがに1LDKでは狭くなったんです」。ネックは予算。ちょうど近所に大型の新築マンションが次々とオープンしていた時期だった。「でも高い! とてもじゃないが手が届かないし、お仕着せの間取りにも抵抗があったので、中古マンションを購入してリノベーションすることになりました」

Mさん宅近くの眺め。「麻布は新しさと古さの両方の良さを持った街だと思います」

最大の関門はエリア。「子どもを転校させたくないのでエリア内限定でした。予算に合う物件が出るのをネットで気長にチェックしていました」。そのなかでチェックしていた近所の物件が、やや価格を下げて売りに出されたのを見つけ、すかさず少し価格交渉をしたのが今の住まい。「もともと周辺環境のことはよく知っていたし、ずっと情報収集をし続けていたので相場観も分かっていました。だからすぐ決断できました」

ひとつの壁の色だけ変えてアクゼントに。こうしたこだわりも中古ならでは実現可能

中古というものの、「1982年以降の新耐震基準で建てられたもの」を基準にし、管理状況や大規模修繕の履歴などはきちんと確認した。「このマンションは室内の状況は決してよくは無かったものの、それはリノベーションでなんとかなる話。共用部のメンテナンス状況の良し悪しは重要でした」
もうひとつ妥協したのは「騒音」。北側の部屋から高速道路が近かったからだ。「特に妻はしぶりました。でも窓が二重サッシになっていて窓を閉めればけっこう聞こえないもの。それより予算内で、自分たちの環境を変えなくていいことを優先しました」

室内はリノベーションで一新。家族が集うLDKを広めに、つくり付けの収納が各場所に配置された、ナチュラルな空間に生まれ変わった。「といっても、実は間取りはあまり変えていないんですよ。内装の下地もできるだけ既存のものを活かしていたり、節約できる部分は節約しています。
ただし、幅広で無垢のタモ材のフローリング、同素材でそろえた建具やアイランドキッチンにはお金をかけました」。リノベーションではメリハリあるコストのかけ方も重要といえる。

パウダールームもキッチンや建具と同素材で制作

この2軒目の住まいも終の住み処とは思っていないというMさん。「下の子が大きくなれば、もっと部屋数が必要になるかもしれないし、子どもが独立して二人暮らしになれば、また重視する項目は変わってくる。その時その時の経済事情、したい暮らし、重視する条件に合わせて家は替えていけばいい。その前提として、売りやすく、貸しやすい都心立地であること、無理のない価格であることは絶対だと思います」。ただ、今の麻布の住まいは離れがたく、家は変えても環境は変えるつもりはないそう。「親も子どももこの街で友人が増えましたから。結局、人のつながりが街を離れがたい理由になるんですね」
取材協力/
リビタ 取材・文/長谷井涼子 デザイン/キュリオデザイン